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片田舎の堕落男 -第1話-【ピーターパン症候群の男と車いすの女】

投稿日:2019年5月19日 更新日:

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-喧騒のある都会の音-

夢を…見ていた。
そこはたくさんの人々や車が行き交う都会の大通り。
その歩行者道路の真ん中に突っ立って、俺は自分の目の前を通り過ぎていく人々を観察していた。

スーツを着た生気が感じられない帰宅途中の男。
電話越しにペコペコと頭を下げる男。
上司に無理やり連れられ飲みに誘われる職場の若手風の男性。

俺の目の前を様々な千差万別の働くオトナ達が通り過ぎていく。
俺はその人々を軽蔑の目で観察していた。
…実に…下らない…。
俺はこんな奴らみたいになりたくないと…ただただ心の中で彼らを見下し蔑んでいたのだ。

 

誰かが言った。オトナになることは「成人の歳を迎えること」だと。
誰かが言った。オトナになることは「自立して納税して社会人の責任を取れるようになってから」だと。
誰かが言った。オトナになることは「結婚して子供を作ること」だと。
誰かが言った。オトナになることは……「子供に戻りたいと思った時」だと。

 

オトナって……なんだ?
二十歳になって金を稼げて、自立して、責任も取れて、結婚もして…子供の頃は良かったなぁと振り返る時間があったらオトナになれるのか?
大体…責任ってなんだ?
俺は一体…誰に対して責任を果たさなければいけないんだ?
そもそも責任を果たす義務が俺にはあるのか?
それは俺の知らない所で知らないオトナたちが勝手に決めたルールだろ?
そんなことを俺が質問するとオトナは決まってこんな言葉を俺に返してくる。

『社会的に責任が発生するのがオトナなんだ』と…

俺がくだらないと思ってるオトナたちは決まってそんな全然答えになっていない答えを返してくる。
なぜ彼らは勝手に俺をオトナとして認識する?
仮に俺がオトナとしての責任を果たしたその先には一体何がある?

 

誰か…教えてくれ…

俺はただ自由に生きたいだけなのに…なんで俺はこんなに不自由なんだ?


 

「ちょ……ねえ…た!!」

…ん…これはなんの声だ?

 

「栄太!…なさい!!」

…俺の名前を…呼んでいる?

 

「ちょっと栄太!あんた何寝てんの!さっさと起きて店番をまじめにやりな!」
「…はぁ?」

 

-古びた狭いスーパーにて-

 

俺が目覚めたその視線の先には、少しパーマのかかったロングヘアーの中肉中背のスタイルをした中年女性が不機嫌な表情をしながら俺を睨んでいた。
そして俺は寝ぼけ眼ながら、今自分が置かれている状況を頭の中で理解する。
どうやら俺は実家のスーパーで自分の『母親』の大声によって胸糞悪い夢からたたき起こされたようだ。

「なんだ…母さんかよ」
「なんだとはなによ!?あんた店番サボって寝てたくせにその物言いはなんだい!?」
「…母さんが強制的に俺に店番をやらせてんじゃねーか」
「ほう、そんな強気なことを言っていいのかい?我が家の穀潰しでもあるあんたのことをこの家から追い出してやってもいいんだよ?」
「…わーったよ!働きゃいいんだろ!働きゃあよ!」
「当然さ。働かざる者食うべからず。オトナが生きていくには金を稼がなきゃいけないんだ」
「はいはい、分かったから早くどっかいけよ。店は俺が見ておくから」
「言われなくたってこれから出ていくさ。母さんは商店街の寄合にこれから顔出さなきゃいけないんだから!」
「………」
「いいかい!次はサボるんじゃないわよバカ息子!それじゃ私は行ってくるからね!」
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-店のドアを閉める音-

 

「…うっせぇ、ババァ。どうせ俺が起きてようが起きてまいが客なんかあんまり来やしねーじゃねーか」

 

俺は自分の母親が去った後に愚痴をこぼし、再度レジ前の椅子に気だるそうに寄り掛かりながらさびれた店の中で舌打ちをする。
季節は初夏に入ったばかりの6月初旬。夏へ向けてじりじりとうっとおしい暑さが増していく。
俺の名前は『榊栄太』。今年で二十歳になった実家暮らしの夢も希望もない若きフリーター青年だ。
俺は現在、在住県の中心市街地からだいぶ離れた片田舎の町で実家が経営しているスーパーで働いていた。
スーパーといっても通常のコンビニよりも狭いし、品ぞろえも悪いちっちゃな商店だ。
しかしそんな田舎の小さな商店でも、地元の人たちにとって大切なライフラインとなっている。
こんな店だったとしても毎日通い続けるお得意さんだっているのだ。
とは言え、元々の人口が少ない故に客もあまり来ないから全くもってやりがいもなければ利益も雀の涙程度しかない。
そんな状況だって言うのにどうやってこの店の経営が成り立っているのか不思議なくらいだ。

俺が住むこの町には…正直何もない。
強いて言えば、地元の人しか来ないちっちゃな商店街と駅前に俺が生まれる前からあった個人経営のちょっとオシャレなカフェがあるくらいだ。
町の住民の娯楽と言えば商店街の中にある居酒屋やスナックで酒を飲みながらカラオケをするだけといった所だろうか?
あとは全部田んぼと無限に広がる大自然のみ。
それ以外は本当に何もない。

世間では少子高齢化の問題が騒がれているため、その煽りを受けて若い者はこの町を捨て、どこか違う都市部へと移り住んでいく。
まあこんな所にいたって仕事なんて大したものはないし、そもそもこれだけ過疎ってる町で就職求人が出ること自体が稀だ。
あとは低賃金でこき使われるアルバイトくらいが関の山だな…

まあ、将来に夢も希望も見いだせない俺にとってはそんな煽りは関係なくずっと地元に残ってのらりくらりやってるんだがな。
地元の高校を卒業した後、地元に残ってアルバイトを転々とし、今ではたまにある日雇いのバイトや実家の店番をダラケながらも自分が最低限生活できるだけの金は確保しつつ何も目標がないままなんとなくこの辺鄙な片田舎の町で怠惰な生活を送っている。
俺がこの町で怠惰な生活を送る理由…それはこの一言に尽きる…

「…はぁ…大人になんかなりたくねーな」

 

-店のドアが開く音-

突然店のドアが開く音が聞こえた。
俺はそのドアの方向へ向きもせず、最低限の接客をするため気だるげにこの言葉を放った。

 

「…いらっしゃいませ~」
「………」

 

-車輪が回る音-

 

(…うん?…なんだ?この車輪が回っているような音は)
俺は店の中で聞き慣れない車輪音が響いてきたので、それに反応して音がする方向へと視線を送る。

 

「…へっ?」

 

俺はその異様な光景に疑問を持つような言葉が自然と口からこぼれてしまった。
俺が視線を送ったその先にはなんと…

 

麦わら帽子を深く被っている白いワンピースを着た若い女性が…『車いす』に乗りながら店内に入ってきて商品を物色していたのであった。

 

つづく


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凸もりMk-Ⅲ
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物語制作やらゲームに忙しい、ただの物好きです。
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  1. おぉぉぉ!
    新しい話だ!
    続きが待ち遠しい
    これからも頑張って下さい
    応援してます!

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